ようこそ、並行輸入車・逆輸入車の沼へ〈入門編〉

海外から直輸入された自動車を並行輸入車あるいは並行車、海外で販売されている日本車を輸入する事を逆輸入といいます。例えばフォードのように正規ディーラーが日本に存在しなかったり、例えば国内の正規ディーラーでは取り扱いがないグレードやオプション設定がなかったり。国内では手に入りづらい限定車や旧車、クラシックカーなどを並行輸入という手段を用いることで所有できる点が一番の魅力といえます。

その一方で、購入後に「こんなはずではなかった」と後悔をしないために、ぜひ知っておきたい並行輸入車・逆輸入車の心得があります。その心得について要点を紹介してみましょう。

「並行・逆輸入車vs正規輸入車」その違いを知れば、あなたも通になる。

輸入車好きならば一度は聞いたことがある並行輸入車という呼び方。が、実際には輸入形態や日本国内での各種審査・検査・手続きに違いこそあれ、法規上における明確な定義は存在しません。

正規輸入業者(メーカーの日本法人や契約輸入代理店)が自動車メーカーから自動車(新車)を購入して輸入し、日本国内での各種審査・検査・手続きを経て、直営・契約下の販売店を通して消費者に販売される車両が正規輸入車であり、上記に該当しない輸入車(中古車を含む)が並行輸入車。自動車業界内での正規輸入車・並行輸入車の分類はほぼこの解釈で正解といえるでしょう。

次に、並行輸入車と正規輸入車の見分け方についてですが、以下に挙げるような特徴があれば、並行輸入車である可能性が高いです。①車検証に記載されている型式が「不明」もしくは「―英数字―」、②取扱説明書が外国語、③メーターがマイル表示(アメリカ車の場合)である場合など。正規輸入車における型式は「英数字―英数字」ですが、上記①のように並行輸入車は「不明」もしくは「―英数字―」と記載されています。また、アメリカではメートルではなくマイルが浸透しているため、速度計や走行距離がマイル(1マイル=約1.6km)なのです。

もちろん、その他にも並行輸入車と正規輸入車で違う部品や装置が使われているケースなどもありますが、素人目にはあまりにも分かりづらいでしょうから、まずは上記ポイントを確認してみることをオススメします。

並行・逆輸入車の魅力とは

✔︎ 本当に乗りたい仕様のクルマに乗ることができる

日本人は欧米人に比べて高級志向が強いせいか、豪華な装備を誇る上級グレードを求めがち。それゆえ正規輸入車の場合、必然的に本国設定におけるオプション装備がフル装備された、いわば日本向け仕様に仕立てられているケースがほとんどなのです。が、実は欧州本国設定は基本は何もついていない“素”ともいえるベースグレードが存在しており、かつマニュアル車こそがごく当たり前に存在しているのです。欧州の人々はそんなベースグレードに自分が求めるオプション装備をプラスして自分らしい一台を手にすることができます。これはいかにも魅力的なお話だと思いませんか。

例えば、やはり輸入車なのだから左ハンドル&マニュアルシフト(MT)で街を走りたい、シンプルなベーシックグレードでリアルな欧州の味を味わいたい、そんなエンスージャストな方々の願いを叶えてくれるのが並行輸入車最大の醍醐味といえましょう。もちろん、高温多湿な国柄だけにエアコンくらいは装備したいですが、それさえオプション設定とされているメーカーも存在しているのですから。

また、本国で販売されているにも関わらず、諸般の事情から日本導入が見送られている未導入モデルを所有することすら可能。並行輸入車はあなたが本当に求めている欧州車をお買い求めできる点に尽きるといっても過言ではありません。

✔︎ 円高の時は割安に購入可能

各国政府要人の発言や経済指標の発表などを受けて、日々目まぐるしく変動する為替相場の兼ね合いにより円高時に購入すれば、それだけローコストで意中のモデルや部品を購入することができるところも、並行輸入車の利点といえましょう。

もちろん円安時にはやや普段の相場価格よりも費用が高くつく場合もありますが、とりわけYMワークスでは円高時に取り扱う並行輸入車の部品などを大量購入したり、各モデルを買い付けるといった自社努力により、できるだけ販売価格を均一化できるよう常に心がけております。

リーマンショック以降の経済状況や現状の半導体の不足、輸送代の高騰など、並行輸入車を取り扱う専門店を取り巻く環境は決して良好とはいえませんが、私どもは「希望する一台に長く乗り続けたい」、という願いをもつお客様が居るかぎり、その思いをしっかりと受け止めつつ為替相場のチェックにも細心の注意を払い続けます。

要注意!並行輸入車購入時の落とし穴と対策

✔︎ 様々な面で工夫が必要(オートローン・自動車保険、保証、アクセ、整備)

メリットがあればデメリットもあるのが並行輸入車の実情です。例えば、オートローンが組めない、保証、快適装備の有無、そして何よりメンテナンス。実績のある専門店を頼ればオートローンや購入後の保証面などをあまり心配する必要はないでしょう。先ほどもお話しした通り並行輸入車をお買い求める最大の利点は、やはり装備を選べることです。が、常時インターネットと繋いで様々な機能をもつコネクテッドカーが当たり前となりつつある今、欧州規格と日本規格とでは違う仕様、部品が用いられているケースも多く、また「正規輸入車」や国産車と比べてアクセサリー面における不便利さを感じられる方が多いのも事実です。

だからこそ、輸入実績だけでなくそんな諸事情や整備にくわしい、いわば本物の専門店から並行輸入車を購入する必要性が求められます。とりわけ国産車と比べると、新車といえども個体差が大きいと言わざるを得ない欧米車、それも並行輸入車を整備するには、マニュアルや文献のみならず優れた洞察眼と豊富なノウハウをもつスペシャリストの存在が欠かせません。そんなスペシャリストが常駐している本物の専門店がうたうアフターケアこそが真実の購入後保証、を名乗る資格がある、といえましょう。

並行輸入車を日本の公道で走らせるために

✔︎ 並行輸入車を新規登録するための条件

最近SNSなどを中心に「今後、並行輸入車やクラシックカーが輸入できなくなる」などといった情報がまことしやかに拡散されているようですが、今回の改定は法律そのものではなく、審査事務規定の一部に過ぎないようです。並行輸入車の予備検査を受ける前に、事前審査書類を提出しますが、この事前審査書類のチェックが厳しくなるようだ、という認識がどうやら真相に近いと業者間では認知されつつあります。

並行輸入車は海外から届いた時点ですぐに予備検査を受けて登録できるわけではなく、輸入車両が日本に到着→陸揚げ→通関→排ガス試験→マフラー騒音試験→予備検査の事前審査→改善(車を日本の保安基準に適合させる)→予備検査といった一連のフローが存在します。内燃機関をもつ自動車は車両1台につき3万点以上の部品が使用されており、海外から輸入した車両が日本の公道を走行するのに適しているかどうかを証明する事前審査を受けなければなりません。

もちろん、事前審査といっても基本的には書類上の審査ではありますが、その書類の審査がいっそう厳格化されるといったところでしょうか。厳格化されるとはいえ、本物の並行輸入車専門店にとっては当たり前の事柄をより緻密に幾度も繰り返すだけのこと。購入元と書類などのやり取りを繰り返す分だけ納期は長くなってしまいますが、並行輸入車やクラシックカーを求める声があるかぎり、私ども専門店は精一杯の情熱を込めて努力し続けますので、ご安心ください。

輸入後に必要な試験や検査

海外から輸入した逆輸入車は、いくつかの試験や審査を通過してから車検を受けます。この車検を受けることで初めてナンバーを取得して日本国内で走行できるようになります。

✔︎ 予備検査(車検)

予備検査とは自動車輸入代行(車輸入代行)で並行輸入された車両等のナンバープレートの付いていない車両登録前の自動車の自動車検査(車検)を受けることです。 先ほどご紹介した事前審査に無事受かった後に取得することができます。

✔︎ 自動車排出ガス試験

排ガス試験、排気ガステスト、排ガス検査(ガス検)は自動車排出ガス試験の略称になります。

実際の試験では冷間時および暖気後のアイドリング状態での排出ガスのデータ、また、実際の走行をシミュレートして排出ガスのデータを取ります。

小型・中型の並行輸入車は、東久留米にある「財団法人日本車両検査協会自動車試験所」、または昭島にある「財団法人日本自動車輸送技術協会昭島研究室」、大型の並行輸入車は筑波にある「財団法人日本自動車研究所」まで車両を持ち込んで試験に挑まなければなりません。車両を持ち込む前に、下準備として各種書類を記入する必要があります。 試験に合格すると排ガスレポートが発行されます。

✔︎ ブレーキ試験

乾燥した路面、濡れた路面のそれぞれの状況下で、100km/hからブレーキを踏み込んで停止するまでの停止距離と停止姿勢について評価する試験です。予備検査受検前に合格している必要があります。

✔︎ 加速走行騒音試験

加速走行騒音試験とは、試験場にて50km/hからアクセルを一杯に踏み込んだ状態で測定地点を通過した際に、マフラーをはじめとする加速走行時の騒音量を判定する試験です。こちらも 予備検査受検前に合格している必要があります。

並行車の保証・リコール

正規輸入車の保証は国内市場やメーカーの意向に合わせ、インポーターが設定しているものです。対して、並行輸入車の場合は並行輸入業者が独自に設定していることがほとんど。必然的に正規輸入車はメーカーサイドからの支援があるので期間も長めとなり、その内容自体も手厚いものとなります。近年の正規輸入車における新車保証は、一般保証・塗装保証3年間、走行距離無制限対応、ボディ腐食などは12年間となるのが一般的です。

並行輸入車も新車の品質向上に伴い、長くなる傾向にあるといえますが、一般保証・塗装保証2年間、走行距離50,000-60,000km(少し前の正規輸入車の保証レベル)あたりが多いようです。リコールを含む重大な部品の不具合についてはメーカーのワールドワイドワランティ(世界保証)により対応するところがほとんどでしょう。

これらの保証やリコールへの対応力とレスポンシブな姿勢は並行輸入業者・販売店の能力・資質に左右されることが多く、そのあたりのノウハウや姿勢を持つ販売店を選ぶことが賢明といえるでしょう。

並行輸入車の保険加入:意外と簡単?知っておきたい注意点

✔︎ 自賠責保険

日本国内で公道を走る際には、自賠責保険への加入が必須です。しかし、逆輸入車は公道を走れるようになるまでにいくつかの手続きが必要なことから、手続きをする流れで車を運転して移動させる場合は、その都度自賠責保険へ加入しなければなりません。車検証やナンバーを取得するまでの手続きをすべて陸送で行うならば問題はありませんが、自走するなら必ず加入手続きをしましょう。

自賠責保険の加入だけなら手続きは意外と簡単で、一部のコンビニ、車販売店、陸運局で行うことができます。自賠責保険は1カ月単位で加入できますが、それだと割高になるので余裕を持って1年間加入することをオススメします。

✔︎ 任意保険

並行輸入車の場合、型式が不明であったり、明確な車両金額が算定できなかったりするので、契約自体を断られるケースが数多く見受けられます。そのほとんどは資料不足や担当者のスキルや取り組み方の場合を含んだ情報不足によるもので、明確な資料さえ提示することができればスムーズに加入が認められます。

つまり、並行輸入車でも車両保険を含む任意保険に加入することが可能なのです。ただし、料率が高くなる可能性や、一部ネット系の自動車保険ではウェブ上での保険料見積もりができず、実際に対面しての契約が求められるなど、多少なりとも不便が生じる可能性があることはご承知おきください。

ちなみに、YMワークスでは東京海上日動火災保険の総合自動車保険「トータルアシスト自動車保険」をご紹介しています。もともと審査条件が厳しくなりがちな並行輸入車やクラシックカー、レースカーですが、私どもが築いてきた長年の信頼関係と実績により東京海上日動火災保険への加入はスマートかつスムーズ。任意保険の加入でお困りの場合には、お気軽にスタッフまでご相談ください。

並行車の修理とディーラーにおける扱いと対策

✔︎ 正規ディーラーは敬遠しがち

並行輸入車は日本では手に入らない車種があり、所有欲を満たしてくれると同時に一種のステータスとなり得ることは事実。ただ、生い立ちが同じメーカーやブランドであったとしても、ほとんどのメーカーの正規ディーラーは並行輸入車をほぼ取り扱ってくれません。規定や規則が違うこともありますが、並行輸入車の状態が日本の法規に合致していないため、あるいは採用されている部品が違うため、整備などを行う際に時間と手間がかかってしまいます。そして、その責任を負うことも困難です。

また、最近は国産ディーラーにせよ正規輸入車ディーラーにせよ、小さな部品交換一つで済む場合であってもアッセンブリー交換が大前提となりつつあり、そういった細やかな整備に熟達したメカニックが育ちにくい環境下にあるのが実情です。そのため、並行輸入車の購入を検討している愛好家は、事前に必ずかかりつけ医を見つけておかねばなりません。この点は先に書いた車検問題同様に、しっかりと念頭に入れておかなければならない事案といえるでしょう。

✔︎ メンテナンスとパーツ供給

補修部品の入手も並行輸入車界隈では長らく問題とされている重要ポイントです。第三者を通じた人まかせの旧態然としたやり方では部品の入手に手間取ることもありますが、昨今のインターネットの目覚ましい発達を活用すれば、直接的かつスムーズな部品の入手が可能になっています。多くの販売店では何らかの部品確保のルートを持っていますし、価格設定が日本と異なる場合も多いので、思わぬ価格で入手できる可能性すら期待できるでしょう。そのうえ、消耗品などについてはOEM部品(純正部品メーカーの自社ブランド品)を使うことでランニングコストの圧縮にもつながります。つまり、並行輸入車を購入する上で最大のネックとなるのは車両の購入よりも、今後を託すに足る整備工場を探すことを重視するのが一番なのです。

とはいえ、日頃慣れていないモデルであろうことは容易に想像がつきますし、同一モデルを扱った経験があったとしても正規仕様と並行仕様では構成部品が異なるケースがままあり得ます。そのため、ほとんどの整備工場が負うべき責任が負担となり、安全マージンをとって並行輸入車のメンテナンス費用を高く見積もるケースが多く見受けられます。そういった意味でも、やはり信頼の置けるファクトリー探しが何より先決であることが分かっていただけることでしょう。

✔︎ 並行輸入車の車検

日本で新規登録するので、たとえ中古車であっても「新車」として扱われます。そのため、車検を受ける年数も新車と同じになります。それ以降はナンバーごとに車検を受ける年数が異なります。もし低年式の中古車で逆輸入車を購入した場合、新車として扱われるのに少し違和感を覚えるかもしれませんが、そんな場合でも横たわってくるのは、他国に比べて極めて厳格な車検問題といえましょう。

日本の規格に合致させるための改良費、例えばヘッドライトをはじめとする保安部品、そして排気ガス対策などによるコスト増大はあらかじめ車両購入費用内に含んでおきたいところ。エンジンなどの馬力が日本とは異なることもあり、並行輸入車はとりわけ排気ガスにおける基準値が違うことがあります。また、並行輸入の場合は日本にて正式な型式を取得しているわけではないので、個人(代行業者)がひとつひとつクリアしなければならない手間があります。また、保安部品は走行面に影響がなくとも日本の法規にのっとった仕様に変更しなければならず、そのまま車検を通すことはまず不可能。できれば、あらかじめ日本仕様のヘッドライトやウインカーなどを入手しておきたいですね。

✔︎ 並行輸入車のカーナビ・オーディオ装着

基本的に、アメリカ車の純正ナビは日本国内で使用する事はできません。また、周波数なども異なることからラジオやDVDの視聴にも制限がかかります。そのため、ナビなどを使用する場合は日本国内で各メーカーから販売されている社外品を装着することとなります。最近では欧米車を問わず、モデル別専用の装着キットが開発されはじめているので、以前のようにナビゲーションの装着自体に多大な費用や時間がかかる事は少なくなりました。また、国内用ナビゲーションに内蔵している地デジ、CD/DVD再生等の基本的な機能はもちろん、スマートフォンとの連動、リアモニターへの出力、バックカメラといったオプション機能についても問題なく利用することが可能です。

車種によっては専用の取付キットが販売されていないモデルもありますが、そのような場合でも配線やパネルの加工、モニター増設などをして取り付けることができます。純正モニター、マルチシステム(エアコンの設定等)装着車には純正モニターを別の場所に移設する必要が生じますが、本来の見た目や機能を損ねるようなことはありません。

並行輸入車の将来価値は?買取査定や下取りの際に不利に働くケースも

製品(商品)というものは、購入したその場から価値が下がるものであることは、ご存じの通り。それは輸入車においても例外ではなく、ましてや購入後のメンテナンスやアフターサービスの取り扱いが難しい並行輸入車の場合はフェラーリやランボルギーニといったよほどのスーパーモデルでもないかぎり、買取時の査定額や下取り時に意外なほど低い額を提示されることが多いことをご覚悟ください。

万一、手放す決心がついたのであれば、まず購入先に査定額を問い合わせるか並行輸入車を取り扱っている専門店を訪れるのがベター。なんといっても、ヒトとは違う個性的な一台を所有したい人々が集まる場所ですから、ごく一般的な買い取り店舗に引き取ってもらうよりも高く買い取ってくれる可能性が高いからです。普段から、そういったエンスージャストの集まりに参加して友好を深めておけば、手放す際にも協力を仰げるかも知れません。また、そこで気に入っていた一台を購入するきっかけとなり得るかも。ようこそ、並行輸入車・逆輸入車の沼へ。入門編をお送りいたしました。ぜひご参考くださいますよう、よろしくお願いいたします。

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